【授業紹介】中等科地学「北アメリカ大陸横断皆既日食」レポート
2018.01.10
昨年8月21日、北アメリカ大陸の西から東へ横断する広い範囲で、
地球から見て月が太陽を完全に覆い隠す「皆既日食」が観測されたと話題になりました。
皆既日食のルート(日食帯)がアメリカ大陸を横断するのは1918年以来99年ぶりのことです。
この貴重な機会に学習院中等科・高等科では研修の一環として理科の教員を派遣し、
現地での観測を実施しました。
10月、中等科では地学(担当教員:田中舘宏橘教諭)の授業でこの皆既日食を取り上げ、
現地での観測の様子を紹介するとともに、日食についての学習を行いました。
(写真)地学実験室での授業の様子
(写真)日食が起こる仕組みについて解説する田中舘先生
日食は、地球の周りをまわっている月が太陽の手前を横切るときに、
月によって太陽が隠される現象です。
このとき月が太陽の一部を隠す現象を「部分日食」、すべてを隠す現象を「皆既日食」、
月が太陽を隠しきれず輪のように見える現象を「金環日食」といいます。
仕組みは簡単なのですが、実はさまざまな偶然が重なったことによって起こります。
まず、月が地球をまわるときの円軌道(公転軌道面)が、
地球が太陽の周りをまわる公転軌道面に対して少し斜めになっているため、
月と太陽が重なることは、なかなかありません。
また、重なったとしても、地球は陸地よりも海の面積の方がずっと広いので、
月の影が地球の陸上を通ることもまれです。
さらに皆既日食となると月と太陽の大きさがピッタリ同じでないと起こりません。
もともと月の大きさは太陽の400分の1という大変小さい天体です。
皆既日食は、その小さな月が偶然にも地球と太陽の距離の400分の1の場所に
浮かんでいることによりみられる現象なのです。
さらにさらに、月の公転軌道が楕円形であるため、
地球から見たときの月の大きさが変化します。
このため月が遠い位置だと、
太陽・月・地球が一直線に並んでも月の周りから太陽がはみ出してしまい、
「金環日食」となってしまいます(2012年5月に東京を中心に見られた現象です)。
授業ではまず、この日食が起こる仕組みについて、
デスクライトを太陽に見立て、地球儀と月の模型をその一直線に並べて、
詳しい解説が行われました。
その後、田中舘先生がアメリカ・ワイオミング州で動画撮影した、
皆既日食発生前後のレポートを観賞しました。
(写真)皆既日食の瞬間を観賞する生徒たち
(写真)太陽が月の影に隠れた瞬間に現れる「ダイヤモンドリング」
皆既状態の始まりと終わりにも見られる。
(写真)月が太陽を完全に隠した皆既状態の様子。
普段は見ることができないコロナ(太陽を取り巻く希薄ガス)やプロミネンス(紅炎)を
肉眼で見ることができる。
ダイヤモンドリングが現れた瞬間、生徒たちからは大きな歓声が上がりました。
田中舘先生が今回観測したのは、ワイオミング州のキャスパーという町です。
今回の日食では、皆既日食(月の影)の通り道「日食帯」の中心線近くに位置するため、
比較的長い時間観測することができたとのこと。
現地での様子について、午前11時台という普段は最も太陽光が明るく輝く時間帯、
日食がはじまると少しずつ辺りが薄暗くなり、皆既日食の直前には月の影が地上を覆って、
まるで夜のようになり、昼間なのに金星が見えたと話されていました。
日食は年に一度ほど地球上のどこかで見られますが、日本からは部分日食が数年に一度、
皆既日食と金環日食は数十年に一度しか観測できません。
日本で次に皆既日食が見られるのは17年後、2035年9月2日の日曜日で、
石川・富山・長野・新潟・群馬・栃木・埼玉・茨城・千葉などの一部で観測できます。
関東地方での皆既日食は148年ぶり、2035年の次はなんと727年後です・・・
さらに現在、月は1年間に約3㎝のスピードで地球から離れているため、
長い年月を経ると、地球から見た月の大きさがだんだんと小さくなり、
遠い将来は皆既日食自体が起こらなくなるとのこと。
田中舘先生のレポートで、生徒の皆さんは、
いま生きているこの時代でしか見ることのできない皆既日食という奇跡を実感し、
「次回は絶対見よう!」と口々に話していました。