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5月29日(月)・5月31日(水)、
高等科3年・選択生物の授業(担当:鍋山 航 教諭)を取材しました。
この授業では、1年間を通して大学の生命科学の分野に直結するような実験を行っています。

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今回は、「PCR実験(ポリメラーゼ連鎖反応)」を行いました。

頬の口腔上皮細胞からDNAを抽出し、
DNAが自己複製をする性質を利用してDNAの複製を行います。

DNAは頬から取り出すのですが、量がとても少ないため肉眼で見ることはできません。
そこでこれを、PCRにかけることで2の40乗という膨大な量に複製します。
すると、ゲル電気泳動にかけた際、DNAがバンドとして視覚化することができるようになります。
PCRの原理を学び、自分自身のDNAを観察することが、この実験の目的です。

実験方法は次のように行いました。

頬から細胞を取り出し、インスタジーンマトリックスという試薬と混ぜます。
これにより、不要なDNAの分解を止めます。

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自分の頬から細胞を取り出す
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取り出した細胞にインスタジーンマトリックスを混ぜ、不要なDNAの分解を止める

高温のウォーターバスに入れることで、細胞をほぐし、
DNA分解酵素のはたらきを止め、細胞を破砕(はさい)します。
そして溶液中にDNAを抽出させます。

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ウォーターバスで細胞を破砕

遠心分離機でインスタジーンマトリックスを除き、
上清のDNA抽出液を、PCR反応溶液と混ぜます。
PCR反応溶液中にはDNAポリメラーゼなどDNA合成に必要な要素が入っています。

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DNA抽出液をPCR反応溶液と混ぜる

サーマルサイクラーにかけてPCRを行い、DNAを自動的に2の40乗まで増やします。
計算上、1本のDNAからおよそ1兆本まで増えることになります。
頬から取り出した細胞はおよそ1000個~数万個あるはずですので、
PCR反応後のDNA量はさらに莫大になります。

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サーマルサイクラーにかけてDNAの量を増やす

およそ4時間後、PCR反応が終わり、アガロース(寒天)ゲル電気泳動にかけます。

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電気泳動の様子

ゲルを脱染、脱染色し、完成です。

<結果の見方>
結果は個人により、つぎの3タイプのパターンが出ます。
今回注目したのは、PV92領域のイントロン配列と呼ばれる部分です。
ここに個人差があります。
具体的には〔Alu〕と呼ばれる特徴的配列がある人とない人がいます。

例を挙げますと、以下の3パターンになります。

Aさん(+  +):  ―〔Alu〕―
―〔Alu〕―
Bさん(- -):  ――  (Alu配列無し)
 ――  (Alu配列無し)
Cさん(+ -): ―〔Alu〕―
――  (Alu配列無し)
 
AさんはAlu配列があるためDNAが長く1000bp下付近に太いバンドが1本出ます。
BさんはAlu配列が無い為DNAが短く700~500bp付近に太いバンドが1本出ます。
Cさんは2本の染色体のうち①1つはAlu配列があり長いDNAであり、
②もう1つの染色体はAlu配列が無い為短いDNAであるため、
①1000bp下付近と②700~500bp付近とに、それぞれ1本ずつ細いバンドが出ます(合計2本)。

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<まとめ>
今回、バンドもおよそきれいに見ることができ、おおむね良好な結果が確認できました。
ホモザイゴスの(+ +)は多数、ヘテロザイゴス (+ -)が例年より多くみられました。
しかし、ホモザイゴスの(- -)はゼロとなりました。

PCRは、社会では一般的な手法であり、例えば遺伝子検査の際、
微量なDNAサンプルをPCRで増やし、解析に用いられています。
高校生物でも教科書としてはメジャーな内容ですが、実際授業で行う場合時間と手間を要します。

そこで高等科選択生物の授業では、出来る限り本物に多く触れてもらう機会を設けることで、
生命科学の入口を体験してもらっています。

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