【高等科】地学部の火星観測
2016.06.17
5月の終わりに、
火星が地球に接近するというニュースが話題になりました。
太陽系で地球のひとつ外側にある火星は、
約780日(約2年2カ月)の周期で地球への接近(会合)を繰り返しています。
火星の軌道は正確な円ではなく、歪んだ楕円であるため、
お互いの軌道上で地球が火星に近づくといっても、すごく近いときと、そうでない時が生じます。
学習院高等科地学部では、
いつもよりも火星が大きく、明るく見えるこのタイミングに合わせて、
火星の観測を行いました。
(写真)高等科校舎屋上
(写真)屋上から南東の空を望んで
この日は薄い雲がかかっていましたが、
南東の空に3つの輝く星を肉眼でも見つけることができました。
上の写真で、いちばん左側の天体が土星、その右上の明るく赤い天体が火星、
下側の少し暗い、赤い天体はさそり座のアンタレスです。
地学部顧問の松濤誠之先生が、
火星にはギリシャ神話の軍神アレスの名前が付けられており、
さそり座のアンタレスは「アンチ・アレス(火星に対抗する)」というところから
その名が付いたとお話ししてくれました。
昔の人も、今夜のように火星とアンタレスが近く見えるときに
その名をつけたのかもしれませんね。
また、南西の空では、
明るく輝く木星を見ることができました。
(写真)天体望遠鏡で木星を観察する
今回、惑星の観測で使用したのは「セレストロンC8」という天体望遠鏡で、
高等科が所有している望遠鏡の中では最も焦点距離が長く、拡大率の高いものです。
火星と地球が近くなったと言ってもその距離は7,528万キロメートルもあり、
肉眼ではとうてい火星の表面の様子は確かめられませんが、
こうした焦点距離の長い望遠鏡を使うことで、
より詳しい観測を行うことができます。
天体望遠鏡にCCDカメラを接続して動画を撮影し、
その動画の中からよく映っている静止画を約1500枚程度選んで合成するという手法で、
火星、土星、木星のすがたをとらえました。
(写真)火星
(写真)土星
(写真)木星
また、この日の観察では、
「イプシロン180」という、太い鏡筒で光を集める能力に優れた天体望遠鏡も使用し、
北東の空、はくちょう座の恒星デネブの周辺にある「ペリカン星雲」を
撮影することができました。
(写真)地学部が撮影したペリカン星雲
天体望遠鏡「イプシロン180」と、ノイズの少ない冷却CCDカメラ、
街明かりをカットするフィルターを3種類使用して、
淡い星雲の光を約3時間分集めて撮影したものです。
その名の由来の通り、ペリカンの顔の形をした星雲が、
はっきりと写っています。
このペリカン星雲は地球から2000光年離れたところにあります。
宇宙の広がりを目の当たりにし、星の美しさ、不思議さを体感することができました。