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1月20日(水)、
高等科3年・選択生物の授業(担当:鍋山 航 教諭)を取材しました。
この授業では、1年間を通して大学の生命科学の分野に直結するような実験を行っています。

今回は、身近な生き物のタンパク質を分析する
「タンパク質電気泳動実験」を行いました。

生き物の体は、タンパク質で出来ています。
多くの生き物は、種を超えて共通したタンパク質を持っていますが、
一方で、種によって異なるタンパク質も持っている場合もあります。

この実験では、お刺身やお肉などの身近な食材をいくつか用意し、
①タンパク質を抽出し、
②電気泳動で分析することで、
種間に「共通している」タンパク質と「異なる」タンパク質を見比べます。

今回用いた食材は、
マグロ、カンパチ、タラ、サーモン、鶏もも、ブタ、エビ、イカの8種類です。

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生物種が、近い・遠いを表す図として「系統樹」が一般的に用いられます。
系統樹とは、生物の分類を樹枝状の線で繋ぎ、一本の木のように示したものです。

タンパク質の電気泳動を行うと、
「バンド」と呼ばれるタンパク質の特徴的な模様が現れるのですが、
果たして系統樹との相関性は見られるのでしょうか?
今回は、以下の点に注目して実験を進めます。

◆系統樹で近種の生き物同士 ⇒ 電気泳動のバンドパターンは類似する。
◆系統樹で遠種の生き物同士 ⇒ 電気泳動のバンドパターンは異なる。

【実験手順】
鮮度の良いお刺身やお肉を準備し、これらを0.25cm角に切り取ります。
そして、タンパク質を食材から溶かし出す性質の「サンプルバッファー」
という青色の液体の中に入れます。

20160225_002.jpg
(写真)お刺身を切り取る
 
続いて、およそ1分間、
サンプルバッファー中で食材を懸濁(※1)し、タンパク質を抽出させます。

20160225_003.jpg

この上清を95℃でボイルし、タンパク質を変性(※2)させます。

20160225_004.jpg

さらに、「ポリアクリルアミドゲル」という特殊なゲル中にサンプルを入れ、
200Vで30分間電気泳動(※3)しました。

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(写真)サンプルを抽出し、ゲルにサンプルを移す様子

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(写真)電気泳動装置(泳動中)

30分後、電気泳動をストップさせ、ゲルを染色します。
こうして、以下のようなゲルが出来上がりました。

20160225_007.jpg
(図)美しい青いバンド模様が現れたゲル

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[解説]
※1 懸濁
サンプルバッファーにサンプルを加え、かき混ぜること。
この作業で、可用性のタンパク質がサンプルバッファー中に溶け出します。

※2 タンパク質の変性
タンパク質は、20種のアミノ酸が直鎖上につながった「ひも状」の分子です。
タンパク質は、生体内では通常「ひも状」の分子が「立体」的に折りたたまれて存在しています。
お刺身などは「生」の状態のためタンパク質の構造は「立体」ですが、
熱処理すると立体構造が壊れ、アミノ酸でできた一本の鎖になります。
ボイルすることで生の状態の「立体」構造から、「変性」した「ひも状」に変化させます。
こうして、電気泳動に用います。

※3 電気泳動のしくみ
タンパク質はアミノ酸でできたひも状の分子です。
タンパク質の種類によって固有の長さがあり、
「長い分子」、「中くらいの分子」、「短い分子」など様々です。
それらに電荷をかけ、ゲルの中で「よ~いドン!」させると、
「短い分子」ほどゲル中を早くすり抜けられるので、ゲルの先頭まで移動することができますが、
「中くらいの分子」は真ん中までしか移動できず、さらに、「長い分子」は移動することが大変なため、
スタートした地点からほんの僅かしか移動できません。
この移動度の違いが、バンド模様として現れます。
一本一本のバンドが、タンパク質の種類一つ一つになるのです。
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生徒たちがこのゲルを分析した結果、
「マグロ」と「サーモン」と「カンパチ」のバンドパターンが似ていること、
それらに対して「エビ」と「イカ」が大きく異なることがわかりました。
分類上、魚類に対して甲殻類、頭足類ですから、これらはお互いに遠い種になるわけです。

また、意外な結果として、
鳥類と哺乳類である「鶏もも」「ブタ」と、
「マグロ」「サーモン」「カンパチ」の魚類のバンドパターンが類似していることが判明しました。

鍋山先生によると、
「鳥類や哺乳類と魚類のバンドパターンが近いことは、
これらの生物種にとって大切なタンパク質が、種を超えて保存されているのかもしれない」とのことです。

20160225_008.jpg
(図)系統樹

実際の系統樹に今回の結果を当てはめてみると、およそ合致しました。
脊椎動物は、かなり似通ったバンドパターンになりました。

今回の授業では、出席した生徒から
「電気泳動は専門的な実験で、普段の授業ではなかなかできないので、
貴重な経験をしていると思います!」
との感想がありました。

~鍋山先生からのメッセージ~
1年間を通して、生物をとことん突き詰めて勉強してきた「選択生物②」の生徒達。
今回の授業のレポートを提出して終了となりました。
3年生のみなさんのこれからの活躍を期待しています!


20160225_009.jpg

使用したお刺身は、実験後にみんなで美味しくいただきました。

6月「PCR実験」の様子はこちらから
7月「pGLO バクテリア遺伝子組換え実験」の様子はこちらから
9月「GFP精製クロマトグラフィー実験」の様子はこちらから
10月「マウス組織標本の作製」の様子はこちらから
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