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9月16日(水)、
高等科3年・選択生物の授業(担当:鍋山 航 教諭)を取材しました。
この授業では、1年間を通して大学の生命科学の分野に直結するような実験を行っています。

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(写真)授業の様子

前回の実験では、
遺伝子組換えにより大腸菌(E.Coli)に
GFP(緑色蛍光タンパク)遺伝子を組み込みました。

今回の目的は、このGFPを組み込んだ大腸菌を液体培養という手法で大量に培養し、
GFPそのものを抽出することです。

<1.大腸菌(E.Coli)の溶解>
まず、大腸菌に培養液を入れて遠心分離し、大腸菌が沈殿した様子を観察します。
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(写真)UVランプで大腸菌が沈殿した様子を観察。光っている沈殿物が大腸菌。

次に、大腸菌の中に閉じ込められているGFPを取り出すために、
大腸菌にリゾチーム(酵素)を加えて菌を溶かし、
「凍結→融解」という処理を繰り返します。(凍ると膨張して、菌体が破壊されます)
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(写真)液体窒素でサンプルを凍らせる様子
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(写真)凍らせたサンプルを37℃のお湯に浸す

さらに遠心分離を行うと、
GFPは水に溶けやすい性質なので、上清に出てきます。

以上の操作で取り出した「大腸菌抽出液」をカラムにかけます。

カラムとは、タンパク質を抽出するときに使う特殊な樹脂の詰まった
管のことをいいます。

<2.カラム操作>
まず、GFP入りの「大腸菌抽出液」を、2M(モル)の塩溶液に調整します。
(2Mという濃度は、生体分子にとって非常に高濃度の塩溶液です)
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(写真)カラム操作の様子

この高濃度の塩溶液の中では、GFPの立体構造が変化し、
普段はGFPの内側に隠れている「疎水性(水が嫌いな部分)」の領域が、
むき出しの状態になります。

一方、今回用いるカラムは、
疎水性のタンパク質を吸着する性質があります。

2Mの溶液に調整した「大腸菌抽出液」を、
準備したカラムの上部から注ぎ、UVランプで確認すると...

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(写真)抽出したGFPを含む大腸菌抽出液

カラム上部がきれいに光り、
ディスク状に、GFPが吸着していることがわかりました!

これは、2Mの高濃度の塩溶液でGFPの疎水性の領域がむき出しになり、
疎水性のカラムにGFPが吸着したことを表しています。

続いて、1.3Mの洗浄液で、
GFP以外のタンパク質たちを洗い落とします。
(大腸菌抽出液の中には、GFP以外にも沢山の大腸菌のタンパク質たちが含まれているため、洗い流します。GFPはカラムと結合しているので洗浄しても落ちませんが、GFP以外のタンパク質たちは結合していないため洗い流されます)

いよいよGFP抽出です!
低濃度である10mM塩溶液を、カラム上部から注ぐと、
ポタポタとGFPの緑色蛍光が滴下してくる様子が観察できました。

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(写真)ディスク状に吸着したGFPが見えます。

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(写真)緑色蛍光のGFPがだんだん下降していく様子
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(写真)次第に落ちてきます。
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(写真)さらに落ちてきます。

<実験のポイント>
①遺伝子組換えによって、本来オワンクラゲが持つGFP(緑色蛍光タンパク)を、
大腸菌(E.Coli)の中に取り込むことに成功した。(前回の実験内容)

②その大腸菌の内部にあるGFPを、
リゾチームという酵素で溶かし、凍結と融解をすることで破壊し、
菌の内部にあるGFPを取り出した。

③GFPの立体構造は塩濃度によって変化する。
GFPは本来、水溶性であるが、2Mという超高濃度塩溶液に浸すと、
疎水性の部分が表に現れてくる。
この性質を利用して、2Mの塩溶液に調整したGFPを
疎水性のカラムに入れると、カラムとGFPが吸着する。

④溶出では、10mM塩溶液をカラムに加えると、
GFPは、立体構造が元通りになり、
出っ張っていた疎水性の領域はGFP内部へと引っ込む。
そうすることで、カラムから外れて、滴下する(溶出)。

⑤カラムによってタンパク質を抽出することは、通常目で見ることはできないが、
GFPの場合、UVを当てると緑色蛍光に光るため、目で確認することができる。

<まとめ>
前回の遺伝子組換え実験から続き、
GFP(緑色蛍光タンパク)やカラムでの精製の仕組みを
視覚的に学ぶことができました。

[鍋山先生のコメント]
カラム操作は、大学の生物系で、
主に、目的のタンパク質を精製する際に行う実験(技術)です。

しかし、タンパク質がカラムに
①吸着したかどうか
②洗浄でも落ちずにカラムに残っているかどうか
③溶出したときにちゃんと落ちてきているかどうか
を目で見ることまでは出来ません。

でも、GFPは違います。

GFPはUVを当てると緑色蛍光を発しますので、
①吸着したこと
②洗浄してもそのまま吸着していること
③しずくとしてGFPが落ちてくること
が現象として観察出来ます。

この見える!という点に、教育的意味があると思います。

生徒の皆さんからは、
「今回は緑に光らせる実験で、綺麗だった」
「ディスク状に光らせるのがなかなか難しかったが、無事に成功して安心した!」
との感想が寄せられました。

今回の実験も、楽しく取り組むことができたようです。

6月「PCR実験」の様子はこちらから
7月「pGLO バクテリア遺伝子組換え実験」の様子はこちらから
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