【授業紹介】高等科3年・選択生物「pGLO バクテリア遺伝子組換え実験」
2015.08.07
7月14日(火)、15日(水)、
高等科3年・選択生物の授業(担当:鍋山 航 教諭)を取材しました。
この授業では、1年間を通して大学の生命科学の分野に直結するような実験を行っています。
(写真)授業の様子
今回は、「 pGLO バクテリア遺伝子組換えキット」を用いて、
バクテリア(大腸菌)の遺伝子組換実験を行いました。
遺伝子組換え技術の理解を深めることを目的に、
大腸菌が本来持っていない「緑色蛍光タンパク」の遺伝子を取り込ませ、
その新しい性質を大腸菌内で発現させます。
具体的には、もともとは蛍光を持たない大腸菌の細胞に、
オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク遺伝子を導入することにより、
大腸菌の表現型の変化を観察し、組換えが行われたかどうかを確認をします。
(写真)先生による概要説明
この実験は、
無菌状態で作業を進めることが大きなポイントです。
マスクを着用し、アルコールで手を消毒してから
作業に取り掛かりました。
バーナーを扱い、火炎減菌による無菌操作で実験を進めます。
風で埃などが飛ばないようクーラーのスイッチも切り、
暑さに耐えながらの実験となりました。
(写真)大腸菌を緩衝溶液に入れて懸濁
(写真)先生の指導を受けて作業を進める様子
溶液の混合を終えたら、
ヒートショック法で急激な温度変化を与えます。
これにより、大腸菌への遺伝子の導入が行われます。
(写真)氷上で4℃に冷やしたチューブを
42℃に調節したウォーターバスに50秒間浸す
タイムキーパー役の生徒が時間を確認しながら、
正確に作業を進めていきました。
次に、「LB培地」という、培養に必要な栄養成分を含む液体を加えて
大腸菌を培養します。
(写真)LB培地注入後、指で軽く弾ませるようにして溶液を混ぜる
このとき、以下の4種類のプレートを用意します。
①+DNA LB/Amp(アンピシリンが加えられたもの)
②+DNA LB/Amp/ARA(アンピシリンとアラビノースが加えられたもの)
③‐DNA LB/Amp(アンピシリンが加えられたもの)
④‐DNA LB(何も加えられていないLB培地)
①②のプレートには、大腸菌とプラスミド(pGLO)が入った溶液、
③④のプレートには、大腸菌のみ入った溶液を滴下します。
「プラスミド(pGLO)」とは、細胞内にある、核以外の細胞質中の DNAのことです。
この実験では、「ベクター(遺伝子の運び屋)」としてプラスミドDNAを使用し、
遺伝子導入を図ります。
(写真)2種類の溶液をそれぞれのプレートに滴下し、
植え付けループを用いて大腸菌サンプルを広げる
その後、
4つのプレートにコロニー(細胞のかたまり)形成をさせるため、
翌日まで37℃のインキュベーター(温度を一定に保つ装置)に入れます。
(写真)インキュベーターに入れ、コロニーを培養する
2日目は、
培養したコロニーの様子を観察します。
遺伝子導入した細胞が緑色蛍光に光るかどうか、
実験室の電気を消し、暗闇の中UVランプで照らしてみると・・・
(写真)4つのプレートを並べて照らす
1つだけプレートが緑色蛍光に光っています!
左から、
①+DNA LB/Amp [コロニー形成有り]
②+DNA LB/Amp/ARA [コロニー形成有り 緑色蛍光]
③-DNA LB/Amp [コロニー形成無し]
④-DNA LB [コロニー形成有り(多数)]
という結果です。
(写真)緑色蛍光に光るコロニー
大腸菌にプラスミドDNAを導入しましたが、
アンピシリン(抗生物質の一種)入りの培地で培養することで、
プラスミドDNAをうまく取り込んだ細胞のみがコロニー形成をしました。
さらに培地にアラビノース(糖の一種)を加えたものは、
上の写真のように遺伝子が発現して緑色蛍光に光りました。
遺伝子の組換えが成功していることが確認できました。
(写真)コロニーを観察する様子
観察後、実験のまとめを行いました。
培養したコロニーの数を数え、遺伝子組換え効率の計算に用います。
(写真)テキストをもとに、実験のまとめを行う
(写真)培養したコロニーの数を数える様子
実験を終えて、生徒の皆さんに感想を伺ってみました。
「無菌状態で行う実験だったので、高度な内容だったと思う」
「実験が成功して嬉しい。暑い中、我慢して作業した甲斐があった!」
「やっぱり実験は楽しい!」
今回の実験は、期末試験後の温習日期間に行われました。
複雑な実験を行うにあたって、
このように時間をたっぷりと確保できる期間があり、
集中して取り組むことができるのも、
学習院高等科のカリキュラムの特徴です。
皆さん、暑い中での実験お疲れさまでした。
充実した夏休みを過ごしてくださいね!
(写真)実験を終えた生徒の皆さんと鍋山先生