【授業紹介】高等科3年・選択生物「GFP精製カラムクロマトグラフィー」
2014.09.29
9月10日(水)・17日(水)、
高等科3年の選択授業「GFP精製カラムクロマトグラフィー」
(担当:鍋山 航 教諭)の授業を取材しました。
※前回の授業の様子はこちらから
■ 9/10 《1週目》
今回の実験では、前回の pGLO 遺伝子組換え実験に引き続き、
GFP(緑色蛍光タンパク)を疎水性カラムクロマトグラフィーで抽出し、
高蛍光強度のGFP抽出液を得ることを目的としています。
成功すれば美しいGFPのソリューションが得られます。
通常、カラムワークは肉眼で確認することはできませんが、
蛍光タンパクであるGFPはその動きが良く分かることが実験のポイントです。
前回作製の pGLO 導入 E.Coli を用います。
写真左が +DNA LB/Amp 、右が +DNA LB/Amp/ARA です。
各班の生徒たちはバーナーを使った無菌操作で作業を進めます。
2枚の寒天培地プレートから E.Coli を分取し、
それぞれLB/Amp/ARA の液体培地へ移しました。
これをインキュベーターで24時間培養し、
振盪(しんとう)により酸素を与えることで、E.Coli の増殖を促します。
■ 9/17 《2週目》
この日は、いよいよGFP(緑色蛍光タンパク)の抽出を行います。
24時間振盪培養後、両者ともに GFP を発現し緑色蛍光に光っています。
それまでは光っていなかった「+DNA LB/Amp プレートから分取した E.Coli 」も、
今回は綺麗に光っています。
これは、液体培地中のアラビノース (ARA)の存在によりアラビノースオペロンがはたらき、
GFPを発現するように性質を変えたことを示しています。
つまり、アラビノースの存在により遺伝子のスイッチが ON になったわけです。
生徒たちもUVランプで蛍光をチェックしています。
この光る培養液をマイクロチューブに移して遠心分離にかけます。
遠心で E.Coli を集菌します。
E.Coli を遠心分離で回収しました。
沈殿が緑色蛍光に光っていることが分かります。沈殿も綺麗です。
この沈殿を懸濁(けんだく)し、リゾチーム(細菌を溶かす酵素)を加え、細胞を融解させます。
さらに、「液体窒素を用いて凍結→37℃で加温」を2サイクル行います。
細胞を凍らせて、溶かして、を繰り返すことで細胞を完全に破壊し、
細胞内のタンパク質を溶液中に放出させます。
その後、再び遠心分離を行い、今度は上清を回収しました。
不溶性のタンパク質などが沈殿しますが、
目的の GFP は溶液中に溶けだしており、上清に存在しています。
ここからいよいよ本題のカラムワークです。
先ほどの蛍光色のサンプルを、カラム上部にアプライします。
カラム上部に、ちょうど CD のように「ディスク状」になっている
緑色蛍光部分が見られます。
これは、カラム表面付近に GFP が吸着したことを意味しています。
塩濃度が 2M という非常に濃い溶液を使っており、
そのため GFP が疎水性カラム樹脂に吸着しています。
いよいよ GFP の溶出です。
カラムを Wash した後、カラムに用いる溶液の塩濃度を 10mM まで下げます。
すると、GFP がカラム樹脂より外れ、次第に、カラム下部へと下りてきます。
カラム中を移動するGFPの動きが良く分かります。感動的な瞬間です。
生徒たちもカラムにくぎづけです。
最後に、最も濃い蛍光色の部分が下ってきたところを、
マイクロチューブに回収しました。
これで、高濃度のGFPを得ることができました。
GFPそのものだと透明度が高い蛍光色を発しています。
今回の実験も、全班ともにGFPを回収することができました。